第48回 熱帯雨林のそばで放牧?NSWグロスター訪問記(下)

年末年始に訪れたニューサウスウェールズ(NSW)州北部のグロスター(Gloucester)。熱帯雨林の広がる世界遺産「バーリントン・トップス国立公園」という観光地に近いことから、家族やグループ向けに農場滞在やグルメツアーなどを行っている農場があり、農業観光も楽しめる。

面白いのは、コミュニティー作りや交流の場として農業を活用する、地元住民による取り組み「ザ・タッカー・パッチ(The Tucker Patch)」。タッカーとはオージー英語で食べ物のこと。食品をテーマに、コミュニティーを主体とした地方経済成長モデルを作ろうというもので、実際に敷地内で農産品を栽培しながら、地元農家による直売市や養蜂など農業ワークショップなどを開催する。観光客にも開放しており、予約すればツアーにも参加できる。ボランティアも歓迎だ。

農業観光は、観光案内所に出向けばいくつか農場を紹介してくれるが、ツアーの催行に必要な人数が6人からで予約も必要など、なかなか「本格的」だ。受け入れる側にも食事やお茶の用意などがあるためだとは思うが、筆者は2人旅だったため人も集められず、なんとなく敷居が高い。案内所でもらったパンフレットや地図を広げてどうしたものかとカフェで思案していると、年配の地元男性が話し掛けて来た。事情を話すと手を顔の前で振りながら、「最少催行人数なんて関係ない。直接農場に電話して聞けばいい」と笑う。ちなみに彼が薦めてくれたのは、農場滞在もできる「トラッガロング・ファーム(Trudgalong Farm)」。グロスター周辺にはワイナリーも数軒あり、こちらは気軽に立ち寄ることができる。

■ガス採掘白紙に

NSW州の農業地域をドライブしていてよく目にするのは、石炭や炭層ガス(CSG)の採掘など、資源事業に抗議する看板だ。グロスターでもエネルギー大手AGLエナジーによるCSGの探査が行われており、例外ではない。CSGは環境に優しいエネルギーとして注目されているが、農地の汚染や水資源の枯渇などが問題視され、農家や環境保護団体らが強硬な反対運動を続けている。

そしてついに今月4日には、AGLがNSW州とクイーンズランド州でのCSG探査と生産を終了することを表明。抗議活動を行っていた農家団体などは勝利を喜び、次は石油大手サントスが同州北西部ナラブライ(Narrabri)近くで進めるCSG探査を中止させようと圧力を強める計画だ。

AGLは事業終了の理由として石油安や探査結果が思わしくないことを挙げているが、抗議活動などで作業に遅れが出ていたことも影響したとみられている。

■「趣味農家」の増加

天然資源に恵まれたオーストラリアではこれまで、農業と鉱業が長らく共存してきた。しかし、交通網の発達による地方の人口増や、食や環境への関心の高まりを背景に、農業地域での資源事業に対する風当たりが強まっている。

昨年まとめられたグロスターの農業戦略報告によると、同地域の労働者のうち、第一次産業に携わる割合は19%(337人)、鉱業は5%(93人)だった。加えて、定年退職者や都市部の住民が自然の美しい同地に移住し、農業を始めた小規模の趣味農場(hobby、lifestyle farms)が増えているという。趣味農家の増加は農機や農業サービス需要の高まりや人口の増加など経済的に多大な恩恵をもたらす一方、地価の上昇などで、従来の大規模農家にとっては事業拡大がしにくくなるマイナス面もあるという。

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