新・豪州Wagyuと歩む 第10回 日本式農業とは?

オーストラリアで米作り

オーストラリアのクイーンズランド(QLD)州にあるタウンズビル(Townsville)という町から90kmほど離れたエアー(Ayr)というところで、福島県いわき市のNPO法人「いわきワールド田んぼプロジェクト(IWTP)」の方々が日本式水耕方式で米作りをしています。同州に残されていた、たった100グラムのコシヒカリの種もみから始まった道のりで、その種もみをさらに選別して播種(種まき)し、その種もみから取れた米をまたさらに種もみとして残していく、という地道な作業を2012年から開始しました。去年の収穫祭では初収穫までたどり着いたそうです。

エアーは気候が温暖で、1回の田植えから年に4回収穫ができるそうです。さらに、収穫した米の食味検査の結果が、日本産の米の平均を超える優良なものであったそうです。そこには、米の品種や気候などの違いを超えた、日々の努力と日本式農業の技術が集結されているように感じました。

今の日本で米を作っても、減反政策や買い取り価格の調整などで農家の方々は大変な苦労をなさっていると聞きます。その反面、海外の日本食品流通業や日本食レストラン業界では日本米が高値で使用されています。個人的にも、日本の米は甘みも強く、粘りもあっておいしいと感じます。それが、QLD州では年4回収穫できるなんて、日本の農業従事者にとっては素晴らしいチャンスだと感じました。

日本式農法   Made by Japanese

日本人品質「Made by Japanese」という言葉は、「いわきワールド田んぼプロジェクト」のホームページにあった言葉です。同じ遺伝子を使い、同じ土壌で、同じ気候条件で農業を行っても、日本人の作る作物は品質が高い。そこには、日本人が日々当たり前のように行ってきた、手間を惜しまない管理の技術があるのだと感じました。

牛飼いの世界も同じだと思います。日本からオーストラリアへやってきた「和牛」の子孫たち、今や全世界へ広がっています。さまざまな国で違った環境下に置かれている和牛の子孫たちも、技術のしっかりした生産者のもとでは、日本の和牛をしのぐような高品質の牛肉が作られるでしょう。私も、オーストラリアの小さな牧場で、先人たちが築き上げた和牛の飼養方法を参考に、和牛生産を行っています。当牧場の牛肉の品質がほかのオーストラリア産和牛と比べて優れたものであることを目指しています。それができたときに、「Made by Japanese」が証明されるのではないかと感じています。そして、日本の農業後継者たちへの新たなチャンスへとつながるのではないかと考えています。

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投稿者プロフィール

鈴木 崇雄
シドニー近郊のブルーマウンテンにある和牛牧場「 ベルツリー・オーストラリア」代表。日本人が営む唯一の和牛牧場として、オーストラリアで注目を集めている。