食品規制で政府に不協和音? 農相はスーパー大手に強硬姿勢

農家から小売り大手まで、国内食品業界が団結してまとめた報告書「農地から食卓まで(Paddock to Plate)」が発表された。成長に向けた大幅な規制緩和を求める内容で、農家の利益最大化を目指すジョイス農相の方針と一致する。その一方、スーパーマーケット大手の市場支配力増大を懸念する同相は、年内発表予定の農業競争力白書で、農家保護を目的とした一段の規制強化を盛り込みたい考えだ。食品業界の規制をめぐり、政権内でも意見が分かれている。【ウェルス編集部】

同報告書は、過度の規制や柔軟性を欠く労使法、時代遅れの道路法などの障害が、オーストラリア食品業界の競争性を脅かしていると主張。土地利用や農作業、食品安全、物流、廃棄物管理などで連邦、州、地方レベルの規制の重複を避けるため、連邦政府の生産性委員会が一括して監視すべきと提言している。同報告書は、「犬猿の仲」とされる農家とスーパー大手が初めて協力してまとめたもの。オーストラリア食品協議会(AFGC)や全国農業者連盟(NFF)、オーストラリア物流評議会(ALC)、全国小売協会(ANRA)が名を連ねた。

報告書では、より柔軟な労使契約が可能となり、外国人労働者の雇用規制が緩和された場合、労働力需要に大きな波のある農家にとって大きな恩恵になると主張。同時に、労使契約の柔軟化をはじめとする規制緩和は、スーパー大手にとっても福音となる。

加えて、同報告書に先立って発表された、連邦政府の諮問委員会による市場競争規制の見直し案では、店舗営業規制の撤廃など、スーパー大手が有利となる規制緩和策が盛り込まれた。諮問委員会は、スーパー大手の値下げ競争で生産者が割りを食っているとの批判に対し、スーパー大手が先ごろ合意した生産者との行動規範が十分に機能するとして、踏み込んだ対応をしない方針を示している。

アボット首相は1日、同報告書を受けて、今月中にも新たな規制緩和を発表する方針を示した。

■農相、農家保護に意欲

しかしジョイス農相は、スーパー大手が持つ市場支配力を警戒し、規制を強化して農家をスーパー大手から守りたい考えだ。農業競争力白書では、諮問委員会がまとめた市場競争規制の見直し案に対抗する案を盛り込むとみられている。

同相は地元紙に対し「加工業者や食肉処理場、インフラ運営者や小売業者などの圧倒的な力を持つ市場参加者が農家を搾取しており、農家の収入は時給に換算してカフェ店員の半分以下にとどまっている」と発言。農家保護への意欲を示しており、諮問委員会がまとめた市場競争規制の見直し案に対しても「問題なのは(農家の)搾取だが、諮問委員会はその解決策を示していない」として、強い懸念を示している。

■パン値引き、スーパー独占につながらず?

スーパー大手による牛乳の値引き合戦が問題視される中、新たに食パンの値引き合戦が始まった。ウールワースがプライベートブランドの食パン(650グラム)価格を1豪ドル(約95円)から85豪セントに値下げし、競合のコールズとアルディも追随している。規模の小さい販売店などは価格が1.5豪ドル以下では採算が取れないとされており、市場がスーパーに独占される懸念が出ている。

しかし、パン市場の二極化に加え、規模で劣るアルディが今回値下げ合戦に参戦したことなどから、大手の市場支配力強化にはつながらないとする見方もある。パン製造最大手グッドマン・フィールダーは、すでに3年前からスーパーの格安商品と渡り合っているとし、一番の成長ブランドは3.8豪ドルの「ヘルガズ」だとして、値引き合戦の悪影響を否定する。手作りのこだわりパンを販売するソノマも、過去5年間の売り上げが15〜20%増えており事業は好調としている。

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