免疫のない豪農産物は大丈夫? 害虫侵入で甚大な被害も

豊かな自然に加え、他の大陸と隔離されていたことから伝染病や害虫が少なく、「クリーン&グリーン」と海外に宣伝されるオーストラリアの農作物。しかし、国内に病気や害虫がいないわけではない。人やモノの往来が増える中、検疫当局はいつまで伝染病や害虫を水際で食い止められるのか。いったん害虫などの侵入を許した場合、「免疫」のないオーストラリア産農作物には甚大な被害が予想される。【ウェルス編集部】

農作物の3分の2を輸出するオーストラリア。全国農業者連盟(NFF)のブレント・フィンレー代表は先月、「目指すべきは(生産分の)9割輸出」と今後の目標を掲げ、拡大する輸出市場でオーストラリアの強みである「クリーン&グリーン」を維持するため、厳しいバイオセキュリティーが不可欠だとの見方を示した。ロブ貿易相もこれまでに、環太平洋連携協定(TPP)交渉でバイオセキュリティーについて「1インチたりとも譲歩しない」と明言するなど、自由貿易協定(FTA)交渉が活発化する中、市場アクセスと引き換えに検疫基準を緩和しない方針を示している。

しかし、先月末にフィジーから輸入された生のショウガから生きた回虫が見つかり、連邦政府が輸入を差し止めない判断を下したことに対して批判が強まった。ジョイス農相は見つかった回虫がオーストラリアで害虫として分類されていないことを理由に、「輸入を差し止めることはできない」と発言。検疫上のリスクはないと主張する一方、農業省が調査に乗り出したことを明らかにした。

クイーンズランド州政府のマクベイ農相は、生きた回虫が見つかったということは、義務化されている薫製消毒が機能していないことを示していると主張し、輸入の即時差し止めを求めている。ショウガの生産者団体も、今回見つかっていないだけで、害虫に分類される回虫が運ばれた可能性があるとしている。

■侵入ありきの対策

オーストラリア養蜂カウンシル(AHBIC)はバイオセキュリティー強化を目的に、加盟農家から集める会費を引き上げる要望書を農業省に提出した。国内のミツバチは、欧州のミツバチを激減させた寄生虫バロアダニの脅威にさらされているが、国内侵入を防ぐ取り組みに政府は腰が重い。業を煮やした生産者は、ダニの侵入ありきの対策として自ら監視プログラムの設立を計画。アメリカふそ病(AFB)などすでに国内に入り込んだ病気や将来的なダニの侵入の早期発見に集中し、被害を最小限に抑えることに軸を移す。2015年7月から会費が引き上げられれば、年間46万豪ドル(約4,370万円)が同プログラムに充てられる見込みだ。

AHBICのザドウ会長は害虫や病気は早期発見こそがその根絶に向けて重要だと指摘。「オーストラリア産のハチミツは高級品。質の高さはもちろん、害虫がいないことで、他国と比べて農薬などを使うことが少ない」と述べた。

■青果業界でもウイルス上陸

ミバエ(フルーツフライ)被害などが問題となっている青果業界でも今月、北部準州キャサリンのスイカ農場で、海外でまん延するキュウリ緑斑モザイクウイルス(CGMMV)が、オーストラリアで初めて検出された。CGMMVは感染力が強く、スイカやキュウリ、ズッキーニ、メロン、カボチャなどに感染する。人の健康に悪影響はないが、感染した果実は中身が変色し、歯ごたえがなくなる。周辺農家10軒は今後2年間にわたり青果の栽培や販売が禁じられたが、感染の拡大が懸念されている。

また、ビート西部萎黄ウイルス(BWYV)の感染拡大で被害を受けているカノーラに対しても新たな懸念が浮上した。南オーストラリア(SA)州エアー半島のカミンズ(Cummins)で、通常は熱帯に生息するアメリカタバコガの幼虫(コットンボールワーム)が見つかった。農学者のナイジェル・マイヤーズ氏は、豆類やカノーラへの被害が想定されるとし、農家は普段使用しない農薬を用いる必要が出てくる可能性があるとしている。

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