豪発のメード・バイ・ジャパンを 日本の官民団が北部農業初視察

長く重要性が叫ばれているオーストラリア北部の農業開発。アジア市場の拡大や貿易自由化の進展が追い風となり、その成長ポテンシャルが今、再び関心を集めている。安全面で評価の高いオーストラリアの農産品と日本の技術とを組み合わせ、「メード・バイ・ジャパン(現地生産したものに日本ブランドの価値を加えて売り込む)」でアジアの消費者を取り込もうとする動きがある。だが、オーストラリアの悲願でもある北部農業開発、実現は可能なのか。【ウェルス編集部】

20人以上から成る日本からの官民合同ミッションが2月末からダーウィンやクイーンズランド(QLD)州北部タウンズビル、ブリスベンを1週間にわたって訪問し、筆者も一部同行した。オーストラリア連邦政府は、北部農業開発を掲げたものの実現に向けた具体的な工程表作りに着手したばかり。「優先事業などが決まってしまう前に、日本側の要望や提案を提示し、反映させるには良いタイミング」(オーストラリア貿易促進庁からの参加者)での訪問となった。

今回のミッションは独立した取り組みではなく、昨年の日豪経済連携協定(EPA)発効後、同年11月にダーウィンで開かれた投資フォーラムでの農業開発における日豪提携の確認、さらに今年1月のタイ・インドネシアへの日豪両国合同での官民ミッションの派遣に続く一連の流れの中で実施され、オーストラリア北部農業については初の官民合同ミッションとなる。

■CRCの枠組み活用

アボット前政権はこれまで、農業白書や北部開発白書を相次いで発表し開発に積極的な姿勢を示しており、ターンブル現首相も、前政権の方針を踏襲する構えだ。しかしこれらの白書に対しては内容が具体性に欠けるとの批判もあり、どのようにして開発を実現させるのかは依然不透明だ。

オーストラリアは農業支援などで、公費の支援を受ける研究者が地域や民間企業と協力して研究開発(R&D)を行う共同研究センター(CRC)という組織を活用することが多い。通常のCRCは特定の事業に特化され、設立目的や期間などが細かく設定されているが、北部開発白書で設置が決まった北部開発のCRCは、対象範囲が広く、これから優先事業が決定されることになるという。同CRCには連邦政府が10年間で7,500万豪ドル(1豪ドル=約84円)を投じる。

昨年11月に同CRCの暫定トップに就任したジョン・ワートン氏は、タウンズビルの会合で「農業ビジネスで外資企業との提携に非常に強い関心を持っている」と話し、「CRCは北部開発での政府による企業支援で優れた枠組み」であるとして、投資を歓迎するとあいさつした。

同会合ではまた、隣国ニュージーランド(NZ)での食品加工のイノベーションが紹介された。オーストラリアの一歩先を行く取り組みで、食品の加工・研究施設を建設して中小企業に開放し、輸出支援などを行う。オーストラリアがイノベーション投資でNZに後れをとっている背景には、「NZでは酪農など強化分野が絞られ、気候も全国的に大きく変わらない一方、オーストラリアは国土が広く産業や気候が各地で大きく異なり、投資の優先順位付けに時間が掛かってしまう」(在日オーストラリア大使館員)ことがある。実際、オーストラリア北部では、畜産、養殖、穀物、青果など、多様な農業が行われており、逆に、一つの産業に依存しないその多様性が強みでもあるという。

■拡張進めるタウンズビル港

北部の農業開発で課題とされているのが、輸送インフラ施設の整備だ。農産物を輸出するためには十分な道路や鉄道、港湾施設が必要で、QLD州北部の要は150年の歴史を持つタウンズビル港になる。

同州北部では今後も資源輸出の増加が見込まれており、農地の大幅拡張計画も進んでいることから、州政府は同港の拡張を優先事業4件のうちの1件に定めた。これまでに5億豪ドルを投じて、コンテナを3個(通常は2個)運べる大型トラック用の道路などを整備している。

同港は保有する広大な開発区を武器に、官民パートナーシップを深めて20億豪ドルの投資を集めたい考え。同港の貿易・不動産担当者は「(船が着岸する)バースを6カ所新設したい。このうち2カ所は2017〜18年に実現したい」と意欲的だ。バースを増やすことで取扱量を増やし、新規プロジェクトなどを呼び込んでブリスベン港に対抗する側面もある。

■選挙の年で政治リスクに注目

しかし、北部の港湾施設は、アジア輸出でシドニーなど東部の同業に大きく後れをとっている。日本側の資料では、ダーウィンとタウンズビルからのシンガポール向けの輸出コストはシドニーの2倍。港に着くまでの時間も、タウンズビルはシドニーと比べ最大で10日長く掛かる有様だ。航行頻度もダーウィンとタウンズビルは2週間毎と、生鮮食品の輸出には十分でない。

北部開発の実現でネックなのは人口が少なく、政治的な発言力が弱いことだ。官民パートナーシップを強めて投資を集めようとしているが、農業開発を実現するには、何より連邦政府と州政府による明確な意志と長期的な介入が不可欠だ。銀行や退職年金基金など国内の機関投資家が外資ほどには農業開発投資に積極的でないことも、農業ブームに冷や水を浴びせている。

開発成功のカギを握る連邦政府は今年総選挙を控え、発足2年目を迎えたQLD州少数与党政権も、選挙を前倒して実施する構えを見せている。ブリスベンの会合に参加したQLD州関係者は「農業は鉱業と同様、オーストラリア経済で長きにわたり重要な位置を占めている。政権が変わっても、農業政策には大きく影響しない」と政治リスクを否定したが、外資による農業投資規制など、今後選挙結果が影響する可能性も残っている。

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