新年度予算は農業を軽視? バックパッカー税も実施

連邦政府のモリソン財務相が3日夜に発表した新年度(2016/17年度)の財政予算案は、2カ月後に迫った総選挙を意識し、「資金の出所を明確に示した、サプライズのない予算」(全国農業者連盟のフィンレー代表)となった。農家はインフラ事業に予算が割かれたことを歓迎する一方、強く求めていたバックパッカー税の撤回や、地方部での携帯電話の電波改善強化が見送られ、不満の声が上がる。華々しく掲げられたインフラ整備も、実現は民間の投資次第だ。【ウェルス編集部】

運輸インフラでは、メルボルンとブリスベンを結ぶ全長1,700キロメートルの内陸貨物鉄道の敷設で、土地の取得などの着工前事業に6億豪ドル(1豪ドル=約80円)が充てられた。同鉄道の敷設は、連邦政府所有のオーストラリア鉄道会社(ARTC)と民間セクターが共同で行う。予算案では、パートナー候補の民間組織を見つけるためのマーケットテストに380万豪ドルを投じるが、着工・完工に向けた今後の拠出額は不透明だ。

水インフラでは、州・準州政府を対象にダムなどの建設事業に優遇融資を行う20億豪ドル規模の「全国水インフラ融資ファシリティー(NWILF)」を発表。州・準州政府は新年度から、事業費の最大半分の融資を申請できる。返済期間は15年で、最初の5年間は利息だけの支払いも可能。官民パートナーシップの促進が狙いだ。NWILFは、昨年発表の農業白書に盛り込まれた、5億豪ドル規模の「全国水インフラ開発基金(NWIDF)」を補完する制度となる。

■海外の若者、農業労働力の25%

一方、農家が強く撤回を求めていたバックパッカー税については、ワーキングホリデービザ所有者への32.5%の所得税導入を、予定通り7月1日から施行する。国内農業では収穫など繁忙期の労働力をバックパッカーに大きく依存しており、増税で若者が税率の低いニュージーランドやカナダに流出することへの懸念が強い。全国農業者連盟(NFF)によると、バックパッカーは農業労働力全体の約25%を占め、気候など労働条件の厳しい北部準州ではその割合が約85%に達している。

農業のデジタル化が進む中、地方部における携帯電話の電波改善でも、連邦政府は発表済みの1億6,000万豪ドルの拠出を確認するにとどまり、新たな資金は投じなかった。

1年前に当時のホッキー財務相が行った議会での予算案スピーチでは、初の農業白書の発表を控え、農家について熱のこもった発言が繰り返された。しかし、今回のモリソン財務相のスピーチでは農家への言及はわずかにとどまった。

バックパッカー税をめぐっては、労働力を依存する観光業界も強く撤回を求めていることから、今後総選挙に向けて大きな争点となる可能性がある。携帯電話の電波改善とともに、連邦政府は今後、同税導入時期の変更など、選挙に向けて新たな方針を打ち出す見込みだ。

■業界はおおむね歓迎

NFFのフィンレー代表は、内陸貨物鉄道の敷設に向けた拠出を歓迎する一方、「長年話だけがされている事業であり、実際に土がシャベルで掘り起こされている状況を目にする必要がある」として、早期の着工を求めた。また、バックパッカー税が「国内農業にとって非常に重要な問題」であるとし、政府が実施を決めたことを強く批判した。

オーストラリア食品協議会(AFGC)のドーソン最高責任者は、連邦政府が10年掛けて法人税率を25%に下げることを歓迎。一方、オーストラリア肉牛生産者協議会(CCA)のマッツ最高責任者は、「政府の焦点が農業から『雇用と成長』に移ってしまった」として、国内農業、特に牛肉業界が受ける恩恵は限定的だと不満をもらす。しかし、小規模企業向けの減税策では、多くの牛肉ビジネスが恩恵を受けるとしている。

この著者の最新の記事

関連記事

アーカイブ

ウェルスのトリビア

小売り大手ウールワースが、ある事業の分離・上場を計画しています。それは何の事業でしょうか ?(答えは記事中に)

ページ上部へ戻る