NZ漁業の存続性に懸念 娯楽目的の釣りが台頭

日本と同じく島国で、世界有数の漁獲資源に恵まれ、生産の8割近くを輸出する水産物輸出国ニュージーランド(NZ)。漁獲枠の売買制度を導入した資源管理で「持続可能な漁業」の達成を世界にアピールするが、水産物輸出は、為替動向や商品のコモディティ化で相場の影響を受けやすくなったことから過去15年以上伸び悩み、同国経済に占める割合は縮小傾向にある。漁業者の淘汰(とうた)による市場の寡占化や、一部の国への輸出の集中も懸念される。【ウェルス編集部】

NZ一次産業省(MPI)による最新の水産業報告書では、同国の漁業資源の約83%、水揚げの97%近くでそれぞれ、持続可能性が懸念される水準を上回る良好な状態が維持されていることが示された。これを受け、業界団体シーフードNZのティム・パンカースト代表は、「NZ漁業が世界最高水準、またはそれ以上であることが示された」と鼻息が荒い。シーフードNZは今年2月、昨年の水産品輸出額が16億3,000万NZドル(1NZドル=約75円)と前年から6.6%増加し、過去最高だったことを発表しており、アジアからの水産品需要の増加を背景に、NZ水産業の未来は明るいとの見方を前面に出している。

NZが水産資源の開発権を持つ排他的経済水域(EEZ)は世界で5番目の広さで、海岸線の長さも世界9位。海底の9割超でトロール網を使用した漁業が行われておらず、うち3割は法律でトロール船の操業が禁止されている。漁業が可能な海域のうち、実際に漁業が行われているのは全体のわずか35%だ。

また、NZで商業的漁業が行われている海産物は130種に上るが、このうち100種は漁獲枠の設定による資源管理が行われている。全体の漁獲枠の半分は、先住民マオリが保有する。

■成長には付加価値が鍵

アジアへの輸出など、将来の成長が期待される一方で、NZ漁業が直面する問題もある。漁業や養殖業、水産業の国内総生産(GDP)への貢献は、2014年には7億8,600万NZドルと、03年の9億4,000万NZドルから16%減少した。ウエストパック銀行のエコノミストによると、NZの水産業全体は現在、自動化による雇用の減少や長期的な輸出高の伸びの鈍化、高い漁船の維持コストなどによる新規参入の妨げ、娯楽目的の釣りとの漁獲枠をめぐる対立の深まりなど、逆風に直面しているという。

同エコノミストはNZが今後水産品輸出高を増やすためには、新種の販売や、生産の軸を差別化しにくい白身の冷凍品から、付加価値を付けられる冷蔵品に移すことなどが不可欠とみている。

さらに業界では、漁獲枠の売買制度がもたらす大手漁業者による市場の寡占化に加え、水産物の輸出先が集中し、多様な市場へのアクセスが減っていることも懸念されている。ロブスター輸出は9割が中国向け、冷蔵魚輸出も53%がオーストラリア向け、29%が米国向けと全体の8割が2国に集中する。マッセル(ムラサキイガイ)やカキなど軟体動物の輸出も、4分の1が米国向けとなっている。特に中国向け輸出の成長は目覚ましく、輸出高全体にしめる割合は昨年は32%と、00年のわずか3%から急拡大した。

NZの漁獲量のうち、国内消費分はわずか7.7%。輸出分を除いた残りは加工用として食品メーカーに納入されている。

■釣りレジャーが台頭

海での釣りレジャーが、NZ経済で重要性を増している。調査によると、毎年の経済活動規模は17億NZドル。毎年、住民約60万人、観光客約10万人が海での釣りレジャーに9億4,600万NZドルを支出する。皮肉なことに、魚1匹、魚1キログラム当たりの経済貢献は、商業的漁業よりも、娯楽目的の釣りのほうがはるかに大きい。

釣りレジャーは商業的漁業よりも規制が緩く、漁業者が保有する漁獲枠をどう保護していくかが課題だ。NZ政府は釣りレジャー産業に漁獲枠を割り当てることを検討しており、実現すれば、長期的な商業的漁業の存続性に影響がでる見通しだ。

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