NTでバナナ生産停止 疫病対策でQLD州に一極化

北部準州(NT)のバナナ産業が事実上の生産停止に追い込まれた。オーストラリア・バナナ生産者協議会(ABGC)が先週、バナナ黒点病(Banana Freckle)の感染を食い止めることを目的に、2,600万豪ドル(約24億5,000万円)規模の撲滅計画を実施すると発表。NT最大の商業バナナ園を含む対象地域6カ所でバナナの木などが処分され、少なくとも1~2年は収穫が見込めない。今後はサイクロン来襲も予想されている。【ウェルス編集部】

NTでのバナナ黒点病対策は、1年前にダーウィン近郊でキャベンディッシュ種への感染が確認された時点から始まっているが、今回4年間にわたる大掛かりな撲滅計画を実施する背景には、国産バナナの9割を生産するクイーンズランド(QLD)州を同病の感染から守る意図がある。国内で同病が確認されたのはNTのみ。現時点ではQLD州に現実的な脅威はないとされているものの、国内バナナ業界は相次ぐサイクロン被害から立ち直る過程にあり、新たな打撃に耐えられるのか不安が残る。

バナナ業界の規模は10億豪ドル(約942億円)と、国内園芸業界では単独で最大。ABGCのフィリップス代表は黒点病について「葉を傷つけて木の生産能力を弱め、実自体も売り物にならなくしてしまう二重の害がある」と説明。感染拡大による被害は「非常に深刻」であるため、「今回の撲滅計画が必要だ」と主張している。

今後北部ではサイクロン被害も懸念される。気象庁によると、来たるサイクロンシーズンでダーウィンを含む北部がサイクロンに見舞われる確率は46%。来襲した場合の回数は2~3回と予想しており、うち1回は沿岸部に接近する見通しだ。NTのバナナ農園はダーウィン近郊に集中している。

■フィリピン産禁輸への布石?

撲滅計画には反対の声も上がっている。ダーウィンにある種苗業者アーネム・ナーサリーのバーンズ氏は、黒点病が見つかったのが都市部であり、警戒を続けている種苗の繁殖場や農場では病気が見つかってないことを理由に、業界全体を停止させる撲滅計画は「ナンセンスで言葉がない」という。

バナナの木をNTの農家に納入するトロピカルチャー・オーストラリアのナサニエル氏は、撲滅計画実施の裏には、ABGCによるフィリピン産バナナの輸入禁止に向けた取り組みがあり、NTバナナ産業はその犠牲になったと指摘する。黒点病に対して強硬な姿勢を示し、政府への圧力を強めることが狙いで、計画の費用を業界が負担していることがその証拠だという。ABGCは計画費用をまかなうため、農家から徴収する会費を引き上げることを検討している。

フィリピン産バナナをめぐっては連邦政府の農業省が2009年、疫病侵入のリスクを調べた。黒点病を含む7種類の疫病や害虫について侵入の懸念があるとし、フィリピンは出荷前の段階で対策を講じる必要があると結論付けている。その後、フィリピンから輸入されるマンゴーについては昨年検疫の規定が設定されたが、バナナには設けられていない。

■QLD州独り勝ち

ニューサウスウェールズ(NSW)州北部のバナナ農家も、2年連続での猛暑や今年の厳しい寒さ、QLD州豊作による価格下落などを受けて、経営が厳しさを増している。地元の卸売業者によると、NSW州は1980年代にバナナ生産の85%を担っていたが、今や割合は3%未満に落ち込んだ。ブルーベリーやトマト、キュウリなどの他の園芸作物の栽培に移行するバナナ農家が増えたこともあり、今年の生産量は昨年から2割減少すると見られている。あるバナナ農家は生産量が昨年から3割減少し、利益は黒字達成に必要な額の半分にとどまると予想。生産コストの低いQLD州産のバナナが市場を席巻していることで、価格は20年来の水準に落ち込んでいるという。

オーストラリアの13/14年度のバナナ生産量は、今年4月にQLD州北部を襲ったサイクロン「アイタ(Ita)」の被害にもかかわらず、過去最高となった昨年度をさらに8%上回っている。

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