豪の肉牛数、24年ぶりの少なさに 牛の争奪戦激化へ

オーストラリアで肉牛数の減少が続いている。干ばつなどにより3年連続で肉牛処理数が高い水準になったことや、生体牛輸出が過去最高水準に伸びていることが背景だ。今年と来年の肉牛数は20年以上ぶりの低水準になる見通しで、オーストラリア食肉家畜生産者事業団(MLA)は今後、頭数回復を目的とした飼育用や肥育用、食肉加工用と生産者や業者による牛の争奪戦が激しさを増すと予想している。【ウェルス編集部】

MLAの予想では、今年6月末時点の肉牛数は2,620万頭に減少し、来年にはさらに2,590万頭に減る見込み。2013年の水準から340万頭(12%)少なく、1993年以来24年ぶりの少なさとなる見通しだ。今年の成牛処理数は760万頭と10年平均と大きく変わらないと予想されているが、昨年と比べれば16%の減少となる。

オーストラリアからの牛肉輸出(子牛肉含む)は今年、需要が引き続き強く豪ドル安が追い風となるものの、生産のもたつきで105万トンと前年から18%減少する見通しだ。ただ肉牛数は今後5年で回復し、牛肉生産は増加に転じるもよう。2020年には国内の肉牛数が10年平均の2,700万頭になるとみられている。

MLAはオーストラリアの今年の牛肉業界について、競合ブラジルの中国市場での台頭のほか、米国での牛肉生産の回復、国内の肉牛数の変化など注視すべき事項があるものの、全体的に良好に推移すると予想。今夏にさらに降雨に恵まれた場合、肉牛価格は一段と上昇すると予想した。また、豪ドルが想定外に上昇しなかった場合、生体価格指標の東部地区若齢牛指標価格(EYCI)が1キログラム当たり7豪ドル(1豪ドル=約84円)を超えるとの予想も出ている。

■食肉加工業界に打撃か

ベトナムやインドネシアからの需要の強まりで業界の軸が生体牛輸出に傾く中、食肉加工会社が受ける影響が懸念されている。輸出される生体牛の数は今年、前年から17%減の100万頭となる見通しだが、食肉処理用の牛の数ほどには減少しないもようだ。

1月末には、ブラジル系の食肉加工大手JBSオーストラリアが、ニューサウスウェールズ(NSW)州スコーンにある食肉処理場で150人以上を削減することが明らかになった。同社はクイーンズランド州の処理場の操業停止期間を延長したばかり。オーストラリア食肉産業従業員組合(AMIEU)は、今後1年間で処理場の閉鎖が続くとみる。

ビクトリア州に処理場2カ所を持つ中国系食肉加工会社タブロ・ミーツも、操業を停止。うち1カ所については再開時期の延長が続いており、従業員80人が不安を募らせている。

一方で、市場調査会社IBISワールドは、オーストラリアの食肉加工業界は、日中韓との貿易協定による需要増に対応するため、2021年までの5年間で従業員数を2.9%増やす必要があるとの見方を示した。現在の従業員数は業界で3万9,500人。特に高い技術を持つ人材が必要になるとし、業界では処理場の閉鎖や統合などで、今後5年で集中化(コンセントレーション)が進むと予想している。

またオーストラリアの食肉生産は21年にかけて増加し、業界の売上高は210億豪ドルに達して年換算で2.3%成長すると予想した。

■処理場設置の動きも

タスマニア州キング島の協同組合ザ・キングアイランド・ビーフプロデューサーズ・グループ(KIBPG)が、島内に年間処理数が最大3万5,000頭の食肉処理場を建設する計画だ。同島ではJBSが12年に処理場を閉鎖しており、生産者は島外への牛の輸送を余儀なくされている。輸送コストは牛1頭当たり118豪ドルに上り、年間で380万豪ドル分、利益が下押しされているという。

また赤肉加工4位のNSW州のビンダリー・ビーフは、6,000万豪ドルを投じて中国の青島市に食肉のボーニング(脱骨)施設や冷蔵倉庫、配送センターを設置する。完工は年内の予定で600人を雇用。オーストラリア産を中心に年間10万トンの牛肉を輸入する計画だ。

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