高温多湿地域でトマト栽培に挑む 産官学「日の丸」連合が実証研究

沖縄で高品質のトマトやイチゴの栽培に挑戦─。高温多湿の地域では難しい野菜の栽培研究を、三菱ケミカルなどで構成する共同事業体(コンソーシアム)が石垣島で約5年間続け、低価格の植物工場システムを開発した。システムとしての販売時期や価格は未定だが、研究を通じて開発した部品や資材などを順次製品化、東南アジアでの応用も目指す。

研究の最大の特徴は、コンソーシアムに参加する機関が、それぞれの知見を持ち寄って研究開発を進める「知の集積と活用の場」の仕組みだ。日本の農業で培われてきたきめの細かい栽培技術とハイテク企業の技術を融合して、オールジャパンで独自の新たなシステムを構築した。

例えば、富士フイルムは、ハウス内の温度を2〜3度下げることができる熱線遮断フィルムを開発した。電子部品技術を蓄積してきたシチズン電子は、COB(チップオンボード)と呼ばれる集積技術を活用し、28ミリ×28ミリの小さい基板で60ワットLED約50個分の光量を出せる部品を提供した。

パナソニックはセンサーやクラウドなどIT(情報技術)を生かして、植物工場の管理や栽培環境をデータ面で補助するナビゲーションシステムを確立した。気象予測に基づく生育・収穫の見通しなどきめの細かい情報を遠隔地からやりとりできるため、現地の人材不足にも対応できる。

オールジャパンで低価格の植物工場を開発(写真はイメージ)

植物工場システムの分野では、オランダが先進的だが、日本とは野菜の品種や栽培方法が異なり、トマトの場合だと背丈を高く成長させるため天井が高い大型のハウスになる。日本は台風や地震が多く、オランダ方式を導入すると鉄骨やコンクリートの強化で建設費や工場の維持費が割高だった。

実証研究では、背丈の低い状態で育てて収穫する栽培技術を導入、建屋の高さを低くするなどしてコストを下げた。また三菱ケミカルが苗を比較的大きくなるまで育ててから移植する手法を改良して、最適な栽培条件を確立した。

この結果、1ヘクタール当たり2億円未満と現行システムの半額以下の水準で栽培装置の構築が可能になり、高温多湿地域でも本州と同水準の品質や収量を確保できるめどが立った。具体的にはトマトは10アール当たり40トンの生産、糖度6の品質を確保。イチゴは同4.1トン、糖度10、パプリカは同10トン、糖度8と目標を上回る成果を上げた。

コンソ-シアムには、3公的研究機関(農業・食品産業技術総合研究機構、国際農林水産業研究センター、産業技術総合研究所)、4大学(名古屋大、大阪大、東京大、北海道大)、6企業(三菱ケミカル、パナソニック、富士フイルム、シチズン電子、タキイ種苗、堀場製作所)が参加した。

2016年から始まった今回の研究は3月末で終了するが、今後は新たなコンソーシアムを形成し、農林水産省、各国の大使館との連携を深め、遠隔栽培指導サービスを視野に入れて熱帯・亜熱帯地域での実用化を目指すという。

石垣島の実証農場は、ブルネイなど東南アジアの大使館の農務官らも視察、「協力して改善していく」(インドネシア)と強い関心を示した。研究が進めば、東南アジアなどの高温多湿地域で収益力の高い高品質の日本の野菜を現地生産できるほか、温暖化が進む日本国内の産地にも応用できる。

(共同通信アグリラボ 石井勇人)

共同通信アグリラボは、食べ物や農林水産業、地域の再生を考えるために、株式会社共同通信社が設置した研究・情報発信組織です。WEBサイト「めぐみ」を開設し、ウェルスと連携しています。

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