大きくて小さな話

観光地でカフェラテを注文した。地方はのんびりしているのか、やけに時間がかかる。ようやく出てきた大小の紙コップ2つ。前に並んでいた白人男性がためらうことなく大きいカップを取った。店員は「スモールラテ?」とこちらを見た。

いやいや私はラージですと領収書を見せると、店員は「あ」という顔をして、先客の男性に「すみません」と声を掛けた。男性は「ん?」と見返す。すでに白い蓋を外し、砂糖を入れようとしている。眼光が鋭い。米国のテレビドラマ「ドクター・ハウス」の主人公に似ている。「なに?」。店員は「いえ、なんでもないです」と口ごもると、スモールラテを紙コップごとゴミ箱に捨て、あらためてコーヒーを入れ始めた。

自分の行動に一片の疑問も持たない男性の無神経さが気に障る。貴重な時間も奪われた。釈然としない気持ち。手にしたコーヒーはラージだったが、心はスモールだった。(短吉)

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