まずい酒

某酒類量販店によく行く。近所のリカーショップと比べて愛飲する安ワインが半額に近いので、わざわざ車で出掛ける。せっかく来たのだからと必要以上に買い込み、まんまと店側の戦略に乗ってしまっている。

先日、支払いをしていると、隣のレジの光景に目が留まった。中年夫婦がうなだれている。「はい。私の息子です」と、財布を手に持った母親らしき女性が店員に答えていた。横には飲酒年齢に達していそうもないローティーンとおぼしき男の子。ショッピングカートにはビールの箱が積まれていた。

どうやら、店員がレジを離れているすきに万引きしようとしたところを見つかって、親を呼び出されたようだった。

不思議だったのは、男の子が悪びれもせず、平気な顔をして立っていたことだった。かすかに笑みさえ浮かんでいたようにも見えた。もしかすると、親に対する何かの復讐なのか……。その夜の酒はまずかった。(城一)

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