もう来(れ)ないシリーズ
- 2016/2/18
- ことの葉
土曜の午後、お気に入りのカフェで歩道を眺められるカウンター席に座り、道すがら買った新聞を読むのが習慣になっている。
いつものようにカップを口に運び、気になった記事があったので身を乗り出した瞬間、コーヒーにむせ、盛大に吹き出してしまった。まるで松田優作のテレビドラマ「探偵物語」のオープニングのように(知らない方は無視してください)。汚い話で恐縮だが、テーブルはおろか、歩道に面した窓ガラスにもコーヒーが……。3つ横の席でパソコンを開いていた男性は気付かないふりをしてくれたようだ。あわてて新聞を破ってぬぐい、後ろも見ずに店を出た。
人体には、食べ物などを飲み込む際に気管に入らないようにフタを閉じる喉頭蓋というものがあるそうだ。だが加齢により反射神経が衰えると、フタを閉じるのが遅れることがあるので、気管に入るのを防ぐためにむせるのだという。
寂しいものだ。年を取るということは。そして気に入った店を失うことも。(短吉)
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