第17回 ベジタリアンでも大丈夫な簡単めんつゆ

温かいうどんにも、冷たい麺類にも合います

温かいうどんにも、冷たい麺類にも合います

わが家の子どもたちは、麺類、特にうどんが大好きです。寒暖に関係なく食卓によく登場するメニューです。今回は、海外ならではのかつおだしを使わない、オーストラリアでは結構多いベジタリアンやビーガン(乳製品なども食べない完全菜食主義者)の方でも大丈夫な、オリジナルめんつゆの作り方を紹介します。

日本にいたころは、だし用昆布とかつお節でダシを取り、酒とみりんとしょうゆで味をつけていましたが、そうした食材もパースに来てからはすっかり買わなくなりました。きちんとしていなくても、そこそこおいしいつゆ─。試行錯誤した結果、非常にシンプルなレシピができ上がりました。以前この連載でご紹介した、「パース生活に欠かせない厳選調味料(後編)」の中から、しょうゆ、ラパデュラシュガー、昆布(Kelp粉末) の3つを混ぜて、水を好みで加えるだけです。日本酒やみりんを加えないので、火を通す必要もありません。その代わりに、ラパデュラシュガーをしっかり溶かし、昆布の味を出すために少し時間を置いてください。詳しい作り方やアレンジ法はブログで紹介しています。

拍子抜けするほど簡単すぎるこのめんつゆ。実はブログで紹介することを当初はためらいました。公開するに至ったのは、別の日本人の子がおいしいと評価してくれたこと、そしてネットである記事を見かけたことがきっかけです。

■日本で困るベジタリアン

それは、米ニューヨーク在住の方のコラムで、米国ではベジタリアンやビーガンが多いという話に始まり、最後には、ベジタリアンやビーガンの外国人が日本を訪れると、驚くほど食べられるものが少ないと指摘していました。日本食のほとんどのメニューには「だし」が使われているためです。ベジタリアンといってもさまざまですが、肉や魚製品から摂ったスープも口にしない人もいます。

ですが和食の基本中の基本である「一番だし」は、昆布とかつおぶしを使って取りますよね。汁物や煮物、おひたしなどさまざまな味付けに使われますし、この「魚のだし」というのは、私達日本人の味覚形成に大きく影響を与えていると思います。多くの日本人は、かつお節や煮干しを使わない和食なんておいしくないはずだと思うのではないでしょうか。私もかつお節や煮干しのない生活なんて信じられませんでした。パースに来るまでは。

「海外の人に、本当のおいしい日本食を食べさせてあげたい」、つまり「この日本にしかない、だしの味を味わってほしい」と考えるのは、日本人として自然でとても理解できます。ですが、動物性のものを口にしたくない(あるいはできない)人にとって、どんなに味としておいしいものであっても、それを食べることは苦痛になってしまうでしょう。

■本当の和食とは

私はパースに来て、世界にはさまざまなスタイルの料理があるのだと気付きました。さらにオーストラリアという地で、もともとの料理が微妙にアレンジされているものも多いでしょう。どれもそれぞれの特徴があり、おいしさがあります。和食だって、全ての人にとって必ずしもかつおだしの入った「完璧なだし」を作る必要はないのかも、と思います。

今回紹介した簡単つゆも、「こんなの和食じゃないよ」って言われてしまうかもしれません。では、「完璧な伝統的な和食」でなければ、食事として意味がないのか、そして料理とは、食べるとは、どういうことなのか、をつい考えてしまいます。海外から「和食」を見つめ直しながら、本当に日本の食文化を守るとはどういうことなのか、いつか分かる時が来ればいいなと思います。

今回紹介した簡単つゆ。海外で暮らす人だけでなく、日本に住みながらも「魚のだしを使わないでめんつゆが作れたら」と思う人のヒントにもなればいいなと思います。

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投稿者プロフィール

名取 知衣子
1973 年東京生まれ。2013 年から西オーストラリア州・パースに在住。夫、ハイスクールに通う長女、プライマリースクールに通う長男の4人家族。日本と異なる生活に試行錯誤するうちに、オーストラリアの豊かな食事情に興味を持つようになる。オーストラリアのローカル食材を使って日本人が手軽に楽しめる家庭料理を研究中。レシピをブログ「パースで手作りざんまい(http://perth-zanmai.com/)」で公開している。