第14回 フードと人をつなげたい!コンサルタントのトーニャさん

連載第9回で訪れたファーマーズマーケットで出会ったのが、生産者と消費者をつなぐツアーを主催するフードコンサルタントのトーニャ・バー(Tawnya Bahr)さん。シェフでもあり、ツアーも子ども向けからプロ対象のものまで幅広く行う。来豪暦19年のうち「食」のキャリアは18年というトーニャさんに話を聞いた。

トーニャさんは米国出身。オーストラリア人男性との結婚を機に移住した。米国ではIT企業の国際マーケティングの仕事を10年していたが、趣味で食べ物の知識を広げていたそうだ。なんと8歳の時に買った最初の本が料理本という筋金入り。移住をきっかけに「情熱を傾けられる仕事がしたい」と、シェフを目指すことを決意。勉強の傍ら、手作りのシーフード調味料をマーケットで販売し、これが好評でビジネスが成長。ほかの生産者の商品も取り扱うグルメ食材の販売会社を設立した。当初の目標だったシェフ免許の取得はその会社を売却した後にずれ込み、「計画とは逆になった」そうだ。マーケットへの出店や会社設立の経験が、生産者とのつながりや、ツアー主催など、今の仕事の原点になっているという。

■食の現場に直行

マーケットツアーを始めたのも、食品について知りたがる消費者に対し、2~3時間で1日分の売り上げを確保しなければならない生産者側は忙し過ぎて十分な対応ができない状況を経験から知り、変えたいと思ったのが理由だ。生産者側にもこだわりを知ってほしい気持ちがある。シドニーではノースシドニーのほかピアモントでもツアーを開催しており、新たな試みとして、マーケットの常連農家の農場を直接訪ねるツアーを企画した。9月にホークスベリーでサラダ用野菜などを栽培するダーリングミルズ・ファーム(Darling Mills Farm)を訪問する。

■「豪の食材のとりこ」

複数の肩書きを持つトーニャさん。メーンであるフードコンサルタント業について聞くと、顧客はレストランなどで、特別な素材を使ったメニューを提案し、また「このような食材を使いたい」という要望に対しては食材を探し、調達先を確保する仕事だという。海外からシェフを招いたりした際に、オーストラリアの食材を紹介するツアーを企画したりもする。ちょうどインタビューの数日後はシーフードツアーのため南オーストラリア州に、そのまた数日後にはシェフ向けのトリュフツアー開催と、国内各地を飛び回る。中国人グループにプライベートツアーも行った。

■日本の丁寧さに感激

「自分が強く引かれるのは、食材でも料理でも『魂(soul)』が感じられるもの」とトーニャさん。日本訪問は4回で、家族で訪れるほど気に入ったそうだ。特に、日本人が示す食材への尊敬の念に非常に感激したとのこと。料理も見た目の美しさはもちろん、作り手が心をこめて丁寧に食材を扱ったことが本当によくわかるという。「すべての高級料理が(日本と)同じような丁寧さで食材を扱っているわけではない」ため、日本の食材に対する態度の素晴らしさが際立つという。

オーストラリアの食材について知りたいという人へのアドバイスを聞くと、「私に電話すること」と即答。「オーストラリアの食材は本当に素晴らしい。その美しさを多くの人に伝えたい」とまっすぐな瞳で語ってくれた。

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