豪中FTAで農業投資加速へ チャイナマネーにリスクも

オーストラリアと中国が自由貿易協定(FTA)交渉で妥結したことをきっかけに、中国マネーによるオーストラリア農業投資が加速している。農地を買収して一から中国式を導入する強攻策ではなく、経営や規制を熟知するオーストラリアの農家や企業に経営を任せ、農地の取得にも踏み込まず事業の拡大資金を提供する、「パートナーシップ」型の投資が成功の鍵となる。しかし、来たる投資の波にはリスクもあるようだ。【ウェルス編集部】

乳業大手ベガ・チーズのアービン会長が「(オーストラリアの)酪農業が新たな局面に入った」と評価する豪中FTA。同会長は、中国の提携企業との投資機会を探る話し合いが、豪中FTA妥結後にそのペースが加速していると説明。「(中国マネーによる投資)発表は今後も続く」と予想する。

食品会社フリーダム・フーズと中国の農牧大手である新希望集団は、豪中FTAが妥結した17日に覚書を締結。共同でビクトリア州に大規模な酪農場を新たに設置することを明らかにした。新希望集団は最大5億豪ドル(約503億円)規模のオーストラリア農業投資ファンドを設立しており、フリーダムに6割出資するぺリック(Perich)・グループと共に、農場設置に資金を投じる。

また、不動産開発大手の緑地集団も、豪中FTA妥結発表の翌日、オーストラリアの農業部門への投資を加速する方針を発表。「次の一手はオーストラリアの食品または農業企業を取得し、より多くの製品を中国に持ち込むこと」(張玉良会長)とし、買収第一弾は半年以内にも実現する見通しと、鼻息が荒い。また、「(同社の)このような投資は、連邦政府にも歓迎されると信じている」と述べ、中国マネーの農業投資に敏感な連邦政府をけん制することも忘れない。

■豪中FTAは「きっかけ」

より広く、長期的に連携を深めようとする動きもある。食品商社最大手の中糧集団(COFCO)は19日、パースで開かれた食料会合で、西オーストラリア州農業者連盟(WAFF)の後ろ盾を受け、オーストラリア発祥の非営利団体グローバル・ファウンデーション(GF)と覚書を締結した。GFは農業部門の貿易や経済開発を含む国際的なつながりの促進を目指す団体で、WAFFは同団体の現地パートナー。今回の覚書により、COFCOはWA州農家や加工業者、輸出業者との関係を強化できるほか、増産に向けたインフラ整備など、WA州農業への大型投資が可能になるという。

WAFFのパーク代表は今回の覚書を「堅固な関係を築くための第一歩」と評価し、「(COFCOのような)中国市場での大手プレーヤーの後ろ盾を得るのは大きな強み。COFCOが求める安全で質の高い食品をわれわれは供給できる」と期待感を示す。

国内企業でも、複合企業ウェスファーマーズは20日の株主総会で、豪中FTAの恩恵を受ける農業分野への投資意欲を表明。毛色の変わったところでは、中国の電子商取引最大手アリババ・グループが、オーストラリア子会社を通じて高品質食品を中国ユーザーに提供する計画だという。

■「チャイナ・プレミアム」

しかし、中国マネーの持ち主が必ずしも「優良」投資家というわけではない。農業部門を専門とするシドニーの投資顧問会社VCグループのマッコイ社長は、オーストラリア側は「真剣な投資家を見極める必要がある」と助言する。同社長によると、「中国側のアプローチは大抵、『事業計画を見せろ』、『いくらだ』、『価格について交渉しよう』というもの」で、「特に事業計画を見せろという投資家は自身の明確な事業戦略を持っていないことが多く、簡単には交渉がまとまらない」という。

また、粘るものの契約につながらない「冷やかし」投資家(tyre-kickers)に対しても、苦情が増えているという。言葉の壁もあり、オーストラリア側では中国パートナーに対する不信感が根強く、資産売却契約などがとん挫した際の「保険」として、たとえほかに競争相手がいなくても、通常の金額に上乗せした額(チャイナ・プレミアム)を中国側に求めているという。

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